漢方薬の代表的な種類である『煎じ薬』と『エキス剤』の特徴

漢方薬にはいくつかの種類がありますが、その中でも代表的なものが『煎じ薬』と『エキス剤』となります。漢方薬の存在は大抵の方がご存知かと思いますが、その種類についてどういった違いがあるのかなどは知らない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は煎じ薬とエキス剤についてご紹介します。

煎じ薬

煎じ薬とは、生薬を水で煮出した液体のことであり、湯液(とうえき)と呼ばれることもあります。漢方薬において煎じ薬は約8割を占めていますので、漢方薬は煎じ薬のことを指すといっても過言ではありません。処方する際に患者の体質や症状に合った生薬をピックアップした上で、煎じ薬へと加工するという流れになります。

煎じ薬の特徴はなんといっても、独特な香りと味ではないでしょうか。生薬の成分が水にしっかりと溶け出していますので、香りなども強く感じられます。それによって口にするまで抵抗がある方もいらっしゃいますが、漢方の考え方としては香りなども生薬の効果の一部と捉えているため、こちらも重要な意味がある部分となります。

煎じ薬の作り方は非常にシンプルであり、生薬さえ用意ができれば一般家庭でも作ることは可能ですが、その際に必要となるのが土瓶です。ステンレスなどの一般的な鍋では、素材である鉄によって生薬の成分が変化してしまうため注意が必要です。

土瓶に3合分の水と生薬を入れ、やや強めに沸騰させます。沸騰したら弱火にして、液体が1.5合になるまで煮出します。最後に濾してカスを取り除いた上で、ぬるま湯程度の温度になるまで冷やせば完成です。

エキス剤

生薬をそのまま水で煮出す煎じ薬とは若干異なり、煎じた生薬の液体からそのエキスだけを抽出し、顆粒や粉末などに加工したものがエキス剤です。飲む際に煎じたり、あらかじめ仕込みをしておいたりする必要がなく、外出先などでも気軽に飲むことができるというのがメリットです。

また、漢方の独特な香りなどもほとんどないことから、飲む際の抵抗も少ないでしょう。こちらは一見効き目が強そうに感じますが、その効果としては煎じ薬より劣ります。

あらかじめ工場にて加工されるため、煎じ薬のように個人差などに合わせた微調整ができず、効果が薄まってしまう傾向にあるのです。実際に、「エキス剤では効果が見られなかったが、煎じ薬にしたところ効果を実感できた」ということもあります。ただし、効き目よりも手軽さを重視する場合や持ち運びの面に関してはとても優秀といえるでしょう。つまり適材適所、使い分けが重要というわけです。

代表的な漢方薬

漢方薬の中でも代表的なものをいくつかご紹介いたします。

葛根湯(かっこんとう)

風邪の初期症状に対して効果的な漢方薬です。葛根をはじめとする7つの生薬でできており、発汗作用によって体の熱や痛み、腫れなどを発散させて改善を促す効果があります。比較的体力のある方向けですので、胃腸が悪い方や虚弱体質の方にはあまり向いていないでしょう。古くから一般的に親しまれているものですので、知名度としては漢方薬の中でも随一といっても過言ではありません。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

主に鼻風邪やアレルギー性鼻炎など、花粉症などに対して効果的な漢方薬です。麻黄(マオウ)をはじめとする8つの生薬でできており、主に麻黄に含まれるエフェドリン類という成分が、咳などの症状を抑える効果があります。ただしこの麻黄に含まれるエフェドリン類には、心臓などに負担をかけるという特徴もあるため、高血圧の方や心臓病を患っている方は慎重に使用する必要があるでしょう。

安中散(あんちゅうさん)

胃もたれや胃の痛み、食欲不振などに効果がある漢方薬です。延胡索(エンゴサク)をはじめとする胃腸に優しい7つの生薬でできています。個人差がありますので、場合によっては飲んだ後にかえって食欲がなくなってしまうということもあります。他の漢方薬との飲み合わせに注意しないと、思わぬ副作用が出てしまう恐れがありますので要注意です。

防風通聖散(ぼうふうちゅうしょうさん)

体の熱を冷ましたり、体内の水分循環を改善させたりすることで、便秘解消効果に期待できる漢方薬です。また、肩こりや肥満などの症状に対しても効果的といわれています。防風(ボウフウ)や麻黄など10種類以上の生薬によってできていますが、葛根湯と同じく体力のない方や胃腸が弱い方は向いていません。

煎じ薬とエキス剤の使い分け

煎じ薬とエキス剤の2種類が存在する漢方薬ですが、どちらも一長一短です。漢方の効果によって体を根本から改善するのであれば、使い分けがとても重要となってきます。効果を重視するのであれば断然煎じ薬ですが、生薬を煮出すためには時間がかかりますので、ライフスタイルに合わせて使っていきましょう。

一方エキス剤の場合はすでに工場で加工された状態で手にするわけですから、そのまま持ち運ぶことで場所を選ばずにいつでも飲むことができます。

しかし効果があまり高くないというデメリットがあるのです。そのためどちらか一方だけを使うのではなく、状況などに応じて臨機応変に使い分けるといいのではないでしょうか。そうすることでいつでも漢方薬の効果を得ることが可能となるのです。

まとめ

煎じ薬とエキス剤の違いを理解した時点で、漢方薬を使いこなすことは可能でしょう。漢方の効果と場所を選ばずに飲むことができるというメリットがどちらも備わっているので、風邪をはじめとする症状に対して効果的に働きます。
「ありす薬局」では漢方を取り扱っているだけでなく、漢方に関する相談も受け付けております。不明点などありましたらまずはお気軽にお問い合わせください。